

近所の智子さん
ある日の午後、ふらりと現れた近所の智子さん。智子さんは詩穂音から徒歩5分くらいの場所で、夫婦でイタリアンのお店を営んでいる。近所のお店だから、近所の智子さん。
智子さんは、自分用のコーヒーカップを持参して来た。カップを持参してきた人は初めてだ。
智子さんは「これで裕子さんのコーヒーを飲みたくて…」と言う。実は、持参したコーヒーカップは私が智子さんの誕生日に贈ったもの。智子さんは、最初に使うのは私の淹れたのコーヒーを飲む時と決め、カップを使わずにいたらしい。ふふふ…思わず口元が緩む。
私は全身全霊でコーヒーを淹れる。コーヒーカップはコーヒーがぴったり入るちょうど良いサイズだった…(私の淹れるコーヒーは通常のコーヒーの1.5倍入っているので、大きめのカップでないと入らない…)
コーヒーを智子さんの元へと運ぶ。智子さんは嬉しそうに「おいしい!おいしい!やっぱり裕子さんのコーヒーが一番!」と言いながらコーヒーを飲む。そんな智子さんをみて、私も嬉しくなる。
智子さんの為に選んだコーヒーカップ。一番最初に入れるものが、私の淹れたコーヒーに


クロウタドリの夜のハナシ...
クロウタドリの夜
-もしかしたら彼女はカワウソかもしれない-
彼女と食事をするのは今回で2度目だ。一度目は先月、こっそりランチをした。
2度目の今回、同じ店にディナーを食べに行く事にした。夜に出歩く事に慣れてない私たちは、夜に慣れている少年2人を誘った。まぁ、少年と言っても2人とも30歳過ぎているが…
私たちは駅で待ち合わせをした。先に来ていた彼女の姿を改札を抜ける前に発見した。週末の人混みの中で、目を大きく開けた彼女がこちらに気づく。「人が多いー。」と彼女は言った。彼女はいつも目玉が落っこちそうだ。でも決まってこう言うんだ。「大丈夫、ちゃんと繋がっているから…」ふふふ…彼女らしいこたえに笑みがこぼれる。
人混みの中をズンズン進む。私たちは歩くのは好きだが、どうやら避けるのは苦手らしい。私は高校生カップルの間をすり抜けた。6月の湿度がじっとりと重くまとわりついてくる。信号待ちで、眼鏡が曇っている事に気がついた。額にはうっすら汗をかいている。
少年たちが到着し、陽気な金曜日の夜(花金と言うやつだろうか…)の始まる。メニューの書か