酉ノ刻
茨城県の北部、通称県北(けんぽく)地区の端の町、日立市川尻町にある喫茶店 「詩穂音」の新米オーナーのコミネ妻です。今回は、いま詩穂音で開催中の萩谷将司さんの個展、「 酉ノ刻 」について、見て感じた事を書いてます。いたって真面目な内容になってますが、よろしければお読み下さい。
[作家コメント]酉ノ刻とは、現在でいうところの午後6時から8時頃。ちょうど日が沈む時間、昼と夜が混ざり合う時間帯です。薄明かりに浮かび上がる影に眼を凝らしたとき何が見えてくるでしょうか。どうぞお楽しみください。
初めて萩谷さんの作品を見たとき、どこか寂しげに思えた。
なぜだろう?記憶の断片をみているような…
どこにでもある、光景。烏、鉄塔、海、テトラポット…
夕暮れ時の少し物悲しく、それでいて温かいような色使い。
ふと、思い出す、幼き日の記憶。海岸で夕暮れまで遊んだ事。
もっと遊びたいのに、日が暮れてしまった事。
モノクロの記憶に少しずつ色が付く。
萩谷さんの作品は、幼き日の記憶と今を繋ぐ装置のように感じた。
キャンバスに描かれた烏達は、幼き日の私を知っているようだった。
灯台やテトラポットは、あの頃と同じ温度でそこに居る。夕暮れ時の鉄塔は、
記憶の旅へと連れ出してくれる。
記憶の旅から戻り、再び作品を見る。寂しげだった作品たちが、体温を上昇させ
温かさにみちている。そうか、そうゆう事か…
いつの間にか忘れていた記憶。萩谷さんの作品は、記憶の断片と今を結びつけ、
大切な時間を思いさせてくれる。誰にでもある、忘れていたあの頃の記録。
酉ノ刻…
温かく懐かしい時間…
この先も続いて行く時間。
私たちを取り巻く環境は、日々目まぐるしく変わる。
でも、その中で忘れてはいけない事があると思う。
ふと立ち止まり深呼吸して、目を閉じる。瞼の裏には温かい景色。
烏たちはどんなに環境が変わっても変わらずそこに居るだろう…
萩谷さんの作品を実際にみて、それぞれの酉ノ刻を感じて頂けると嬉しいです。
懐かしく温かい時間を過ごせると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2016年詩穂音七月企画展
萩谷将司 「 酉ノ刻 」2016年7月3日(日)~7月18日(月・祝)
詩穂音 by u-coworks
茨城県日立市川尻町5-5-8
0294-43-7855