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クロウタドリの夜のハナシ...


クロウタドリの夜 -もしかしたら彼女はカワウソかもしれない- 彼女と食事をするのは今回で2度目だ。一度目は先月、こっそりランチをした。 2度目の今回、同じ店にディナーを食べに行く事にした。夜に出歩く事に慣れてない私たちは、夜に慣れている少年2人を誘った。まぁ、少年と言っても2人とも30歳過ぎているが… 私たちは駅で待ち合わせをした。先に来ていた彼女の姿を改札を抜ける前に発見した。週末の人混みの中で、目を大きく開けた彼女がこちらに気づく。「人が多いー。」と彼女は言った。彼女はいつも目玉が落っこちそうだ。でも決まってこう言うんだ。「大丈夫、ちゃんと繋がっているから…」ふふふ…彼女らしいこたえに笑みがこぼれる。 人混みの中をズンズン進む。私たちは歩くのは好きだが、どうやら避けるのは苦手らしい。私は高校生カップルの間をすり抜けた。6月の湿度がじっとりと重くまとわりついてくる。信号待ちで、眼鏡が曇っている事に気がついた。額にはうっすら汗をかいている。 少年たちが到着し、陽気な金曜日の夜(花金と言うやつだろうか…)の始まる。メニューの書かれたブラックボードを見るや否や、いや、正確にはメニューをみる前からか…「ウニウニウニウニ…」と呪文の様に隣で呟く彼女がいる。「ウニ、好きなんだ…意外だな。」と私は思う。ウニ好きさんは迷う事なくウニのクリームパスタを注文する。他にも、アジのマリネやマサバのマリネ、マグロの中落ちとマダイのタルタルなど、たくさん頼んだ。彼女はお魚が好きらしい… 料理が運ばれて来る度、彼女は目をキラキラと輝かせながら幸せそうに料理を口に運ぶ。その様を見てわたしは「もしかして前世はカワウソだったのでは?」と考える。すると、斜め向かいに座った少年のTシャツに描かれたスケボーに乗ったカワウソがこちら見て笑っているではないか。 なんと言う事だ…カワウソにはバレていた。彼女がカワウソだったかもしれないと思っていた事も、こうなる事も全てお見通しだったのだ… 全てを見透かされ、なんだかとても悔しい感じがした。カワウソは全て知っていた。複雑な心境で隣を見ると、おいしそうに料理をほおばる彼女。私の向かいには腹ぺこの少年…そしてその隣にはカワウソのTシャツを着た不思議な少年… すべてカワウソの仕業だったのか。わたしは思わずニヤリと笑ってしまった。カワウソに導かれし集まった私たちはたわいもない話に心を躍らせる。まあるい月に照らされてクロウタドリの夜は更けていったのであ

る…


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