近所の智子さん
ある日の午後、ふらりと現れた近所の智子さん。智子さんは詩穂音から徒歩5分くらいの場所で、夫婦でイタリアンのお店を営んでいる。近所のお店だから、近所の智子さん。 智子さんは、自分用のコーヒーカップを持参して来た。カップを持参してきた人は初めてだ。 智子さんは「これで裕子さんのコーヒーを飲みたくて…」と言う。実は、持参したコーヒーカップは私が智子さんの誕生日に贈ったもの。智子さんは、最初に使うのは私の淹れたのコーヒーを飲む時と決め、カップを使わずにいたらしい。ふふふ…思わず口元が緩む。 私は全身全霊でコーヒーを淹れる。コーヒーカップはコーヒーがぴったり入るちょうど良いサイズだった…(私の淹れるコーヒーは通常のコーヒーの1.5倍入っているので、大きめのカップでないと入らない…) コーヒーを智子さんの元へと運ぶ。智子さんは嬉しそうに「おいしい!おいしい!やっぱり裕子さんのコーヒーが一番!」と言いながらコーヒーを飲む。そんな智子さんをみて、私も嬉しくなる。 智子さんの為に選んだコーヒーカップ。一番最初に入れるものが、私の淹れたコーヒーになるとは思ってもいなかった…近所の智子さん。ちょっと不思議な5つ年上のお姉さん…私はそんな智子さんの事が好きだ。